今日は2つ 金沢とチェルノブイリからの声

福島テレビ福島市)で十五年にわたりアナウンサーとして活躍した原田幸子さん(37)が、東京電力福島第一原発事故を契機に長女の真帆ちゃん(6つ)と実家のある金沢市に避難している。「故郷」と呼ぶはずだった福島だが、第二子の妊娠が分かり七月で退社。福島を離れた。「報道に携わった一人としての体験を多くの人に知ってほしい」と今、金沢市であるイベントなどで自らの経験を語る。(松岡等)

 夕方のレギュラー番組でキャスターを務めるはずだった三月十一日。揺れが襲った直後からヘルメットをかぶってカメラに向かう。保育園に預けていた娘の安全を確認できたのは夜だった。夫は他局のアナウンサーで、母娘の二人は三日間、局で寝泊まりした。

 1号機が爆発し、十四日朝、金沢の両親に頼んで娘だけは避難させた。3号機爆発による大量の放射性物質福島市に届く直前だった。

 三月中に初めて金沢に戻った時、友人が食事に連れ出してくれた。豊富な食べ物、汚染を気にすることもない。「これが普通の生活だったんだ」。涙が出た。

*ふくらむ疑問
 それから福島と金沢を行き来する。「東北新幹線で途中、マスクをするのが戦場に帰るために切り替えるスイッチ」だった。

 伝えるニュースに「これでいいのか」という疑問がふくらんでいく。例えば福島駅近くでサクランボをほおばる幼稚園児の話題。洗わないまま『おいしい』と言って食べる“安全性”のアピール。「これって放送していいの?」と思わずにいられない。

 原発報道でテレビへの信頼が失われていくのを実感する一方で「テレビが言ってんだから安全だべ」という人も。本当に福島の人たちに必要な情報を伝えているのか自問した。

 以前から熱望していた妊娠が分かったのはそんな時。「まさかこんなタイミングで」。母親として踏ん切りがついた。福島にはいられない。「命って引き継がれていくんだなと思う。これだけの犠牲があったのだから、強い子になる」。現在妊娠八カ月。男の子と分かった。

*感じる引け目
 福島で今、一番の話題は除染。「大丈夫だと思おうとしているよう。残った人はそういう精神状態になるし、メディアもその方向に進んでいくような気がする」。けれど除染にどれだけかかるのだろう。「県をなんとか維持したいという人たちの思いを感じる」

 最近の電話で知人から「日常の生活で(放射能を)気にするのにも限界がある」と聞いた。「金沢に実家のある自分は幸運。すべてを捨てて福島を離れるのは並大抵じゃない」

 半面、避難した人は引け目も感じる。取材されたくない人は金沢にも数多い。だからこそ、報道に携わった者として、経験を自分が話したい。福島のことを聞いてほしい。原発事故の反省を生かさせなければ、福島が被った犠牲の意味はないから。 中日新聞 11月17日

この記事を読んで、福島県の人たちに正常化の偏見が広がったことが良く分かる。このブログを立ち上げた時に、正常化の偏見に陥らず自分の判断で行動すべきだと書き込んできた。
それを目の当たりにし、更に助長するような報道をしてしまった自分に対して自問していた元キャスターの原田さんの葛藤はどんなものだったのか・・・。
原田さんには、このときの状況を後世に残すためにも、話すだけではなく、文章にして残してもらいたい。

チェルノブイリ原発事故から20年以上たっても、周辺住民に放射性セシウムによる内部被曝(ひばく)が続いていると、ロシアの小児がん専門家が18日、千葉市で開かれたシンポジウムで報告した。また、子どもの免疫細胞も減少している可能性があることも明らかにした。

 報告したのはロシア連邦立小児血液・腫瘍(しゅよう)・免疫研究センターのルミャンツェフ・センター長。2009〜10年にベラルーシに住む約550人の子どもの体内の放射性セシウムを調べると、平均で約4500ベクレル、約2割で7千ベクレル以上の内部被曝があったという。

 03年にベラルーシで亡くなった成人と子どもの分析では、脳や心筋、腎臓、肝臓など調べた8臓器すべてからセシウムが検出された。どの臓器でも子どもの方が濃度が高く、甲状腺からは1キロ当たり1200ベクレル検出された。 asahi.com 11月19日

ロシア連邦立小児血液・腫瘍(しゅよう)・免疫研究センターのルミャンツェフ・センター長が長年見てきた状況は、今後福島県や栃木県北部、群馬県茨城県北部などの汚染地域の未来かもしれない。

日本国内における死亡原因はガンがトップだが、それは日本の高度成長期と重なるようにして、増加している。
これは化学物質の氾濫や大気汚染、ストレスなどの複合的な結果だが、ここに放射線による疾病が加わると、一体どのような状況に陥るのか・・・。

よく探究心を失ったら人間ではないというような事を言う評論家や大学の先生がいるが、その方向性を間違えば地球上の生物全てを苦しみのどん底へ追いやる可能性がある事を忘れてはいけない。

宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」という作品に出てくる「顔無し」は、現在の状況を良く表していた。


今日の測定値

11月21日 午前10時測定 栃木市

SE社製 M4 0.145μSv/h(3分間平均値)
Medcom社製 CRM100 0.150μSv/h

*晴れ・西風少し強め 高さ1m