近代農業行政と原子力行政 構造の類似性

以前にも紹介したが、私は栃木県の南部地域で小さな畑を耕し、無化学肥料・無化学農薬で野菜や原木きのこを育てている。今回の原発事故で、多少なりとも放射性物質を浴びた土壌に対してどのように対処するか苦慮している。相対で私を信用して購入してくださる消費者を裏切ることは出来ないので、今年は野菜作りを断念し、椎茸を全て廃棄した。

ところで、私がいわゆる有機農業にこだわるには理由がある。その理由の1つに、化学薬品メーカーが作る安全な化学農薬の危険性がある。国の農業政策に乗っかり、農業振興事務所や農協の言う通りに、化成肥料と化学農薬、そして莫大な化石燃料を使用し工学的農業を行えば、見た目は立派な野菜たちが出来上がる。最近の農薬は研究が進み、「人間には安全」という不思議な化学農薬が巷に溢れている。ところが、安全基準を守っている真面目な農家ですら、身体の不調を訴える人が少なからずいるのはなぜなのか。
 
 環境ホルモン学会(正式名:日本内分泌撹乱化学物質学会)http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsedr/でも、多くの研究者が農薬の人体への影響を研究し、極微量の化学物質が急性疾患の形ではなく、人体のホルモン様の形で入り込み、悪影響をもたらす事が分かってきている。
農薬の急性毒性をLD50 (半数致死量)であらわすことが多いが、本当に怖いのは急性毒性ではなく、ゆっくりだが確実に蝕んでくる晩発性疾患である。

「去年まで使用していた農薬が、今年は使えなくなって今年から、これ使えってさ。でも、高くてな〜」という話を良く耳にする。日本では農水省に登録された「安全な農薬」以外は使用できないが、毎年その中の何種類かは使用禁止になるのはなぜか(使用禁止になる場合は殆ど、アメリカやヨーロッパで使用禁止後、数年後に日本が見習って使用禁止にする)農水省から化学薬品メーカーへの天下りは、余程美味しいのだろう・・・。

農水省に限らず、最近では薬害エイズ問題で厚生労働省が非加熱製剤の危険性を隠し、被害を拡大をさせたり、1974年に使用禁止になった殺菌剤AF2を危険性が指摘されてから10年も認可を取り消さず、国民に発がんのリスクを背負わせるなど、事例は山ほど出てくる。

これらの裏に見え隠れするのは、天下り先確保のためキャリア官僚主導による、官・財・政・学の利権構造の構築でろう。

今回の原発事故も、これと同じ構造が見え隠れする。経済産業省内で、自己欲を満たすため必死に原子力行政を進めてきた官僚は、国民の前に出てきて釈明するべきではないのか。「天下って美味しい思いをするために、地元住民を騙して、原発を作ってきました」と。

放射線管理区域になるほどの放射線量がある福島県内各所では、復興の名のもとに未だに子供たちが生活することを強いられている。経済産業省のミスを文部科学省がカバーしているのか。なんと美しい、いや見苦しい官僚愛。

政権与党にもかかわらず、フィリピンでゴルフ接待を受けている国家議員もいるとか・・。この有事の際に、何をしているのか。官僚にいいようにあしらわれ、丸め込まれる国会議員。官僚天国は、今まさに責任逃れのシステムが機能し始めている。

経済産業省OBで、東電顧問だった石田徹氏。事故後、いち早くこっそりと辞任して責任逃れ。原発を推進し、東電顧問で大枚せしめて、事故後消えた彼の責任を問う事は出来ないだろう。