政府・東電、原子力安全委員会の発表が気になる

このブログの一番初めに書いた「原発事故と正常化の偏見」の中で、政府・東電や原子力行政を守るため、意図的に情報を小出しにすることで、国民の感覚を麻痺させようとしているならば、それは正常化の偏見ではなく、保身のための悪意に満ちた国民への背信行為である。と書いたが、ここ数日の政府・東電発表を見ると、正常化の偏見ではない事が明らかになってきた。

文部科学省は4日、福島第1原発から北西約30キロの福島県浪江町国道399号沿いの累積放射線量が先月23日から今月3日までで10.34ミリシーベルトに達し、屋内退避の目安となる10ミリシーベルトを超えたと発表した。人工被ばく年間限度の1ミリシーベルトの10倍を上回った。4月5日毎日新聞

東電によると、放出される汚染水の放射能は法令基準の約500倍(最大値)に当たる。全体の放射能は約1700億ベクレルで、2号機の汚染水約10リットル分に相当する。東電は環境への影響について「2号機の高レベル汚染水が流れ続けるよりは軽微」としている。4月4日毎日新聞

 放出による人体への影響について東電は、漁業が行われていない同原発から半径1キロ圏内の外でとれた魚類や海藻を毎日食べ続けたとしても、成人で年間約0.6ミリシーベルトの内部被ばくにとどまるとの試算に基づき「影響は少ない」とした。4月4日毎日新聞

 上記3つの記事は、この2日間でインターネットで配信された毎日新聞の記事だが、どれも事故当初に比べて放射線量単位の桁が代わっている。昨夜海へ放出された、「低濃度汚水」も、基準値の10万倍のたまり水に比べればましというだけで、平常時にこんな数字が出たら、大変な事態になるだろう。また、この汚染水放出による魚などの影響に関して、魚介・海藻類を毎日食べ続けても年間0.6ミリシーベルトの体内被曝に留まるとの試算に基づき「影響は少ない」とされたが、単位を代えれば600マイクロシーベルトである。単位を代え、「影響はない」から「影響は少ない」に文言を変え、徐々に国民を慣らしている(麻痺させている)気がするのは私だけであろうか。
 累積放射線量が10ミリシーベルトを超えた浪江町でも屋内退避の必要はないとされたが、事故当初、放射線量の単位はマイクロシーベルトで、政府・東電は一般人の年間許容限度は1000マイクロシーベルトで「直ちに影響を与える数字ではない」としていたが、累積とは言え3週間で10ミリシーベルト(10000マイクロシーベルト)を超えた地域を放置するのは、愚策ではなく、暴挙であろう。

 公害問題等、人の生死にかかわる事が起きている地域でよく耳にしてきたのは「この国は、人が死ななければ対策を取らないのか」という、被害者達の言葉である。この原発事故においても、急性被曝で人が死ななければ対策を後手後手にするのか。日本が初めて遭遇している放射能危機で、国家が保身のために国民を傷つける事は絶対に許されない。