ホットスポットの対応

千葉県・埼玉県・茨城県の県境周辺の放射線量が高いことは、ずいぶん前から指摘されていた。行政が動かないから、自分達で活動を始めた子を持つ親達は、どんな気持ちだろうか。

今回の柏市の回答は、残念。この放射線量の問題は、国民の問題であり、国が指針を明確化しなければ動けないというのであれば、地方分権などありえないだろう。

「素人考えで何か少しでも過ちを犯せば責任問題になる」という怖さから、責任回避のために国の支持を待っているようだが、市民の健康や財産を守るために市町行政が行った事に対し非難されるケースがどれほどあったのか。

行政裁判が起されるのは、地域住民や市民の意向にそぐわない形で、地方行政がゴリ押しし、市民が生活に支障をきたした時であって、今回のようなケースで、のちに多少大げさな対応であった事が分かっても、誰も文句は言わないだろう。

ここで問われるのは、行政のトップである市長の先見性と、市議議員の調査能力だろう。

市長でも議員でもどちらでも良い。国の指針など当てにせず、柏市独自の指針を決定して、柏モデルとして発表してもらいたい。

ホットスポットは本当に身近に存在している。関東一円、どこにあっても不思議ではないという事を忘れてはいけない。

放射性物質汚染が周辺より比較的強い「ホットスポット」であることが分かってきた東葛地区。放射線量自体は福島市などに比べて低いが、子どもを持つ親たちの危機感は強く、行政への要望活動を進めるほか、避難を考える人まで出ている。一方、線量計測に乗り出した行政だが、その先の具体策は見えない。両者の温度差はなぜ生まれたのか。 (横山大輔)

 「国の暫定基準値が安全だとは私たちには思えない」。六月二十八日、柏市役所。市内でその月の初め、約一万人の署名を集め提出した親たちのグループが再度、要望に集まり行政側に意見をぶつけた。小さな子どもを抱えた母親、やりとりをビデオで映し、行政側に厳しい視線を送る父親。「なんとかしてほしい」という強い思いが会議室に渦巻いた。

 同月、東葛六市で発足させた放射線量対策協議会の調査では、流山市での毎時〇・六五マイクロシーベルトを最高に、柏市でも中十余二第二公園で同〇・五一マイクロシーベルトを計測するなど、市原市にあるモニタリングポストの同〇・〇四四マイクロシーベルト程度と比べ、一桁高い状況だ。この線量の原因は降り注いだ放射性物質とみられ、外部被ばくだけでなく、風に巻き上げられた放射性物質を体内に取り込む内部被ばくの危険性も指摘されている。協議会は、国が福島県の学校向けに示した暫定的な目安の同三・八マイクロシーベルトは下回ると結果を説明する。

 親たちの不安は「将来、影響が出るかもしれない」の一言に尽きる。一度に大量に被ばくして起きる急性症状については線量の目安があるが、低線量では「低ければ低いほどいい」とされているにすぎず、一致した見解がないからだ。

 漠然とした不安だが、要望は具体的だ。農産物の汚染調査が全数対象でないことから「給食の食材は使用前に線量測定して」「安全が確認されるまで砂場の利用を規制して」「内部被ばくの状況も調べて」と続く。

 一方、応じた柏市側は「今回の問題は国民全体の問題。国が基準をつくってくれないと」とかみ合わない。ある担当者が「財源にも限りがある。放射線という今までにない災害に対しても、私たちの素人考えで何かをやって少しでも誤れば、後に責任問題になる。気持ちは分かるが行政の限界」と打ち明けるように自己判断を避け、国や県の基準や専門家の意見を待つばかり。

 行政も親たちの声に押されて模索はしている。東葛六市の連名で六月二十九日、国に安全基準の早期策定と対策の全額負担を求める要望活動を行った。協議会では得られた計測結果をもとに八日、専門家から意見を聞き、対策を検討する予定だ。

 だが、そんな姿勢に親たちは「典型的なお役所仕事だ。今できることがあるのに」と踏み込んだ対策を取らないことにいらだちを隠さない。「そんなことをしてる間にも、子どもたちは毎日毎日被ばくしているのに」
7月3日 東京新聞