風評被害

 テレビをはじめとしたマスメディアの最近の話題は、もっぱら風評被害になり始めた。私自身、補償対象外となるであろう小さな有機農家だが、少なくとも今年1年は農産物を作らない事にした。苦労して土作りをしてきた畑だが、放射能汚染の可能性がある以上、相対で買って頂いている方々に安全ですと、言えなくなったから。
 ところで、風評被害で野菜や魚が売れないというニュースがよく流れるが、なんでもかんでも風評被害としてしまうのは、やはり誤りであろう。国の暫定基準値以下であれば、生涯食べ続けても大丈夫な値としてメディアで盛んに宣伝し、すべてが風評被害で、買い控えするバカな消費者は悔い改めよと言われている気がする。
 本当にそうなのか。どの食べ物も基準値以下で、個々の状態であれば、生涯食べ続けても大丈夫とされる食べ物。しかし、私達は色々な食べ物を食べて生きている。それらの累積は気にしなくてもよいのか。自然界の食物連鎖の頂点にいる人間は、生体濃縮という点で注意を怠れば、体内被曝の可能性が高まる。
 本来の風評被害とは、昨年度収穫された福島県産のお米や干し椎茸などの乾物、冷凍保存されていた魚や塩漬けのワカメなど原発事故以前の収穫物や加工食品などが買い控えされる事ではないのか。ごちゃ混ぜにして、何でも風評被害にするのではなく、放射線不検出の状態にある野菜や魚などのみを流通に乗せ、少しなりとも放射性物質が検出された場合は、政府・東電が賠償するのが筋である。